手刻みのメリットは機械では作れない強固な仕掛け。
コミ栓やクサビなどで締める木に無理のないしなやかな固さにあります。
仕口の無いビス止めの椅子をつくったらおそらく数年で木とビスの接合部が崩れて壊れるとおもいますが、しかっりホゾをくんだ木組みの椅子はそうやすやすとは壊れません。
現在の土台があり比較的細い木で組まれている在来工法は、都市部の急速な需要に対応するため簡略化され作られたものです。
火事の多い江戸の長屋などは火事の度にこわされるので簡易的なつくりのほうが合理的だったわけですね。
冒頭にも述べましたが、現在の新築住宅はそのほとんどが工場機械でつくられたプレカット住宅です。
私が奉公で仕事を習っていた頃はまだ手刻みの住宅がほとんどでしたので、一人前の大工さんという肩書を得るにはある程度の振るいがありました。
年輩の大工さんでも階段作れない、架けれない、骨組みの墨付けができない人も割といました。
都市部は人材確保最優先で、かつそんな人たちを安くつかって「工務店まがい」をしているひとが一定数います。
プレカットが普及するとそれらの大工さんと、一人前の大工さんとの境目がなくなってしまいました。
自分が一生住む家を、骨組みの知識がない人が仕事をしているのは嫌ですね。
手刻みはコストが確かにかかります。
寝ずに働く機会と人間が張り合って勝てる訳がありません。
真壁の 柱 梁 が見える木肌をながめるような家にはじめて技量が生きるのではないでしょうか?
木の家のよさは木の家に住んだ人しかわかりません。
香の放散量が決定的にちがいます。